得意なものがない
それを言われたのは、人生で二度目だった。
「おまえは何が出来るんだ?」
今日、少し年上の友達に言われた。
「得意なものは何かないのか?」
俺は頭が悪く、力も弱い。不器用で運動神経もよくない。
全ての能力値が人並みより劣る俺に、人より出来ることなどあるはずがない。やればできるんじゃない?――やってもできない人間はいる。ほんとにいる。それが俺なんだ。
「……」
だから俺は何も言い返せなかった。それでもこれなら出来る!というものを一つくらい何とか捻り出せないかと必死に思考してみたが、なかった。
俺が何かを人より出来るようになるということは、足の障害で生まれつき立てない人に立てというようなもの。努力でどうにかなる問題じゃない。無理なのだ。
18歳の時、高校を卒業して初めて就職した会社では、上記の発言に加えて「のび太みたいだな」と言われた。
その時も言い返せなかった。その通りだな、とただ思った。
頭か、身体か。
どちらかに優れた能力がある人であれば人生を歩む中で自ずと得意なものができるのであろう。
羨ましい。
何もない自分が悔しい。本当に情けない。